エンジンはかかり、アイドリングで約15秒回って止まってしまいます。メモリーにコードはなく、ライブ値も正常に見えます。これは2020年式EXのオーナーからの報告で、このケースの解決策はわかっていません。個別の事例ですが、診断がどこで終わるかを示しているという点で学ぶところの多い事例です。対象は、M-JET Diagnosticが対応している、1049 cm³の3気筒エンジン(TR-1)を搭載した2017年式以降のEXシリーズ(EX、EX Sport、EX Deluxe、EX Limited)です。
診断が限界に達するところ
ECUが検出できるのは、計測できるもの、つまりセンサー信号、スイッチ、電圧、駆動制御です。信号が許容範囲内にあれば、周りの機械部分に問題があってもコードは出ません。そのため、メモリーが空でもすべてが正常というわけではありません。電子系が何も異常を見ていないというだけです。範囲は狭いものの正直な判断であり、それだけでもいくつかの可能性を除外できます。
それでもアプリで絞り込めること
- コイルとインジェクターを個別にテストします。3気筒ならコイル3つ、インジェクター3つ、燃料ポンプで合計7つのコンポーネントです。テストで1つのシリンダーがほかの2つと違う挙動を示せば、それが手がかりになります。
- ポンプを作動させます。ただし制約があります。このテストでわかるのはポンプが動いていることだけで、十分な量を送っているかどうかはわかりません。
- 始動時とアイドリング時のバッテリー電圧を確認します。電圧が落ち込むなら、コードがなくてもそれが手がかりです。
- スイッチの状態、特に左ハンドルにある緊急停止スイッチの状態を観察します。2021年式のVXでは、このスイッチが腐食してエンジンを止めてしまうことが知られています。EXでも同じことが関係しているとは言えませんが、すぐに除外できます。
燃料系の部品を開けるのは、十分に換気し、近くに火気がない状態のときだけにしてください。
消える前に値を記録する
エンジンは約15秒で止まるため、観察する時間はほとんどありません。次に始動するときはデータロガーを同時に動かし、後で記録を落ち着いて読み取りましょう。注目すべきは、エンストする直前の数秒間の回転数、バッテリー電圧、スロットル開度、吸気圧です。何も異常が見られなくても、その後に機械部分を調べる人に見せられる資料が手元に残ります。
オイルレベルも確認項目に
TR-1エンジンについては、フォーラムでオイル交換後の入れすぎがよく報告されています。これにより回転数が落ち(約500 rpmという報告があります)、エアフィルターや吸気系にオイルが入ることがあります。オイルレベルは、平らな場所で約6分間運転した後に確認します。入れすぎていれば吸い出します。アプリはオイルレベルも、オイルで汚れた吸気系も検出できません。
停止状態での妥当性チェック
走行しなくても確認できる値があります。イグニッションをオンにしてエンジンを止めた状態では、吸気圧と大気圧はほぼ同じになるはずで、どちらもライブデータに表示されます。両者が大きく異なる場合は吸気圧センサー(コード29)が疑わしく、エンジンは吸入空気量について誤ったデータを受け取っていることになります。あわせて、スロットル開度(TPS)を見れば、アイドリング時にバルブが閉と報告されているかがわかります。このチェックは2分で終わり、故障原因の候補をひとつほぼ除外できます。
すべてに異常が見られない場合
その場合は、もともと診断には現れないものが対象になります。状態の悪いスパークプラグ(抜くときはネジ山に注意)、圧縮、コードを出さない腐食したコネクター、詰まった通路などです。アイドリングの再学習は、事前にスロットルやバッテリーに手を加えた場合にのみ意味があります。修理の代わりにはなりません。
この故障は停止中にすでに起きるため、長い計測走行をしてもあまり得るものはありません。私なら、まず個別テスト、次に電圧とスイッチの状態、その次にオイルレベル、最後に機械部分という順で進めます。アプリだけでは原因を特定できなくても、異常のない手順をひとつ重ねるごとに範囲は絞られていきます。